47予定価格

  事前公表も痛し痒し

 地方自治法は 「競争入札」をする場合、「予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とする」と定めています。
 「予定価格」とは「あらかじめ作成する契約価格の一応の基準」です。工事等の発注、物品等の購入の場合はその上限、資産の売却や権利の譲渡等の場合ならその下限となる価格です。予定価格からはずれた金額では契約は成立しません。積算には実例価格や需給の状況、工事等の難易度、数量の多寡、期間の長短などが考慮されますが、その大半は条例や規則でなく「要綱」で定めるためグレーゾーンになりがちです。
 予定価格は入札に先だって「あらかじめ」決まっていますから、厳密な管理が必要です。従来は密封保管され、入札が終わってからその会場で開封し、契約の適否を判断するのが通例でした。また、その内容は少数の幹部職員しか知らず、入札事務に直接携わる職員にも知らせない、いわばトップシークレットだったのです。いきおい、入札に参加する業者や業界が落札を有利にするため、予定価格を探り出すことに躍起となり、接待や贈賄などが横行するにいたりました。
 こうした事態をさけ、より公正な入札を期待して「予定価格の事前公表」に取り組む自治体が増えたのは近年のことです。ところが、今度はその予定価格ぎりぎりの入札が相次ぎ、業者間の公正な競争にも、自治体の経費節減にも役立たない事態がおこり、行政関係者を当惑させています。その結果、予定価格の事前公表を見合わせる動きも強まっています。もともと、予定価格の設定は法的義務ですが、事前公表か事後発表かはそれぞれの「財務規則」などに委ねられており、自治体の任意です。大阪府や大阪市の財務規則でも事前公表する場合、しない場合の両方が規定されています。
 なお、「支出の原因となる契約」については「予定価格の範囲内」の申込者のうち「最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる」との但し書きがあります。これは不良工事などを避ける「契約の適正な履行」及び異常な業者間競争を防ぐ「公正な取引の秩序維持」という観点に立つものです。