51 新教育法制

 憲法からの逸脱は明らか

 久しぶりに出会った府庁OBの方が学力テスト結果の公開や高校再編、国際児童文学館の廃止、センチュリー交響楽団への補助金カットなどについて、「どうしてこんなことができるのか。橋下知事のやり方はひどい」と憤りの言葉をかけてきました。本当にひどい教育・文化行政への干渉、介入ぶりですが、府政に限らず市町村でも首長部局からの干渉・介入が強まっています。一方、教育行政機関の側には「首長のいうことだから仕方がない」と唯々諾々と従う傾向、無力感も漂っています。
 首長の強腰、教育機関の弱腰の背景に従来「教育憲法」と言われてきた教育基本法の改悪(06年)や、その具体化である学校教育法、教員免許法及び教育公務員特例法、地方行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)、いわゆる「教育3法」の立て続けの改悪があるようです。この一連の動きをどう見るか。学陽書房刊の09年度版「教育小六法」の冒頭に掲載されている「教育法制のあらまし」の中に興味深い記述があります。
 たとえば、特筆すべきこととして「自民党と公明党の密室協議を経て、国会に上程された教育基本法案が06年12月15日の参議院本会議で可決、成立し」、「同じ日に防衛庁の『省』昇格と自衛隊の海外活動を自衛隊の『本来任務』とする法律も成立した」と述べ、「新教育基本法」は「改正内容において、憲法との一体性よりも、憲法的価値との緊張を強めざるを得ないねじれを生じている」と批判。「法制自体に大きく矛盾を含む憲法・新教育基本法制は、憲法改正により矛盾を解消するのか、憲法的価値による統合的解釈か、むしろ教育基本法再改正による矛盾克服かが問われている」とまで言い切っています。「小六法」という制約のもと、新教育法制の体系が平和と国民主権、基本的人権を確立し、教育行政・内容への権力的・行政的干渉や介入を排除した憲法原則にそぐわないものであることへの鋭い指摘です。
 今、一見「適法」と見える知事や首長の教育・文化行政への介入・干渉に対し、憲法の原理・原則、教育の原理・条理をかかげて現場からの反撃とあわせて、世論を高め、つぶさにチェックすることが強く求められています。