アレンジ落語「じゅげむ」

  アレンジ落語「じゅげむ」        
                    アレンジ・ちゃ〜ちゃん
                   初演.2013.11.02.旅先にて
 
○おいおい!そんなとこで、正座して一体何をしてんねん。
●いやね、今日は富田林のご一行がお見えやそうで…。
○そやで、長旅ご苦労さんやったなぁ。
●そうでんねん。河内の国から、摂津の国、播州・播磨の国、備前、備中、備後の国を通って、この安芸の国、宮島へきはったんですわ。
○えらい、難しいことを。ちゃ〜ちゃんみたいやな。
●へぇ、わてがちゃ〜ちゃんでんねん。

○ほんで、何をするつもりやねん。
●いやね、折角やから、ちょっと落語のマネでもしてさしあげようと思いましてな。
○ふ〜ん そんなことできるんかいな。
●できまへんけど、筋書きだけはでけておまんねん。ウチのに内緒でつくりましてん。特別秘密でっせ。
○おいおい、ばらしたら懲役かいな。怖いこと言いな。
●練習もしてまへん。ぶっつけ本番で申し訳けおまへんけど。
○ふ〜ん。ほんで外題はなんやねん。
●下剤?そんな、宴席で下剤やなんて。汚いこと言いなはんな。
○下剤やないがな。外題や外題、題名はなんやて言うてるんやがな。
●え〜、日曜の朝にやってるのは「題名のない音楽会」
○そんなえぇもんちゃうやろ、何かテーマみたいなもんがあるやろ。
●はぁ、あの「じゅげむ」たらいう落語がおまっしゃろ。あれにちょっと手ぇかけてつくりましてん。
●言うなら「アレンジ落語。じゅげむ」というところでっかな。
○へぇ〜。あの「じゅげむ」をアレンジしたんかいな。長〜い長〜い、ありがた〜い名前のついた子どもの話やな。こら面白そうや。
○ところであんた。この「じゅげむ」の由来を知ってるんかいな。
●いや、ちっとも知りまへん。
○折角、「じゅげむ」をアレンジしたんやったら、それくらい知っておきなはれ。わてが教えたるさかい、そこへ座んなはれ。
●はっ、ありがとうございます。
☆ 居住まいを正す ☆
○先ずは「寿限無」。「寿限り無し、つまり死ぬ時がないということ」
次は「五劫のすりきれ」。「一劫というのは、三千年に一度、天女が天下って、下界の大きな岩を衣でなでるんやが、その岩をなでつくしてすりきれて無うなってしまうのを一劫という。それが五劫というんやから、何万年、何億年かかぞえつくせん」
●気の遠なるような話でんなぁ。
○それから「海砂利水魚」。「海の砂利も、水にすむ魚もとりつくすことが出来ん」
○まだあるで、「水行末、雲来末、風来末」。「つまり水の行く末、雲の行く末、風の行く末のことや。どれもこれも果てしがない」
○その次が「食う寝るところに住むところ」。「人間、衣食住のうち、どれか1つ欠けても生きていけんやろ」
●ほんまでんな〜。橋下市長やら、松井知事に家賃が安うて、住み心地のえぇ公営住宅たくさんつくれ!って言いとおまんなぁ。
●ほんで次は?
○「やぶらこうじのぶらこうじ」や。「やぶこうじという木があって、まことに丈夫。春は若葉を生じ、夏は花咲き、秋は実を結ぶ。冬は赤き色をそえて霜をしのぐめでた〜い木のことや」
●その後がさっぱり分かりまへんねん。その〜「パイポパイポ」とか言うやつ。
○これは難しいやろな〜。
○「パイポパイポ~」は「昔、唐土にパイポという国があって、シューリンガンという王様とグーリンダイという王女さんのあいだに生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナーというふたりのお姫様や。ありがたいことに、おふたりは大層長生きしたんや」
●あぁなるほど…。キンさん、ギンさんみたいなもんでんな。
○そうや。んで最後が「長久命の長助」やな。「天は長く。地は久しという。読んでも書いてもめでたい結構な字や。それをとって長久命。長く助けるという意味で長助もええやろ」
●それにしても厚かましいオヤジとお袋でんなぁ。なんぼ大事なひとり息子やから言うて、坊さんが考えてくれたありがた〜い名前。全部(ぜ〜んぶ)くっつけて一つの 名前にしてしもたんやなぁ。欲どしいこっちゃ。
○まぁ、それはえぇから、一つ聞かしてんか。あんたのつくったアレンジ落語。
●へぇ、長ったらしい名前のわけを、ひとつひとつ丁寧に教えてもろて、迫力がでますわ。
☆ 居住まいを正す ☆
●とざい、と〜ざい!
○これこれ、草相撲やら、田舎芝居とちゃうんやから、東西東西はおまへんやろ。
●あきまへんか。ほな、通り一遍でっけど…。 
●え〜、相変わらずのバカバカしいお笑いを一席。聞いてもろても損はしまへん。得にもなりまへんけど。邪魔にはなりまへんから、ちょっと聞いておくれやす。
☆ 居住まいを正す ☆
●あ〜、今日はオヤジの一周忌や。供養に名付け親の坊さん訪ねて、昔話の一つもしてこうかなぁ。
○おやおや、あんたかいな。今日はお父さんの一周忌や。供養話の一つも聞こうやないか。
●察しのえぇ坊さんで。昔話の一つもさしてもらお、思てきましたんや。
○ふ〜ん。そらきっとあんたの名前にまつわる話やな?
●やっぱり、察しのえぇ坊さんや。わかりましたか?
○そら分かるがな。んで、どんな話や。

●うちのオヤジとお袋さんは、この長〜い、ありがた〜い名前を一生懸命覚えてくれましてな。何日もせんうちにスラスラ言えるようになりまして。
○そら良かった。大丈夫かいな〜て心配してたんや。
●ただねぇ、笑えん話も仰山ありましたんや。ちょっとだけお披露目しまっさ。
○ふん、ふん。

●え〜わてが小学校にあがる前のことですわ。自立させないかん。というわけで朝はちゃんと歯ぁ磨けとわてを呼ぶんですわ。
●「お〜い、
 寿限無(じゅげむ)寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命(ちょうきゅうめい)の長助よ、早よ起きて歯ぁ磨きや〜っ」ていうわけでんな。
●そやけど、名前があんまり長すぎて、名前呼び終わって口空けてみたら、虫歯になってた。
○んな、アホな!

●わてが学校に上がりましてな、最初の授業や。今日ははじめてやからというわけで、担任の先生が名前を呼んだら「ハイっ」て元気に手をあげなさいって出席をとりはった。みんな、名前を呼ばれたら元気に返事しよる。
● ****!ハイ! ****!ハイ! ****!あいな!ってな具合でな。
●ほんでわての番になりました。先生、一瞬、目を白黒さしてじ〜っと出席簿にらんでましたなぁ。
●腹決めたんかして、わての名前を呼び始めたんですわ。

「寿限無(じゅげむ)寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命(ちょうきゅうめい)の長助」とね。
●もちろん、ハイって元気に返事して、手ぇあげましたんやけど…。
○どないした?
●教室中がし〜んと静まりかえってまんねん。
○なんでや?
●先生が教室見回したら、わての名前呼んでる間にみんな寝てしもた。
 **も寝とる、**ちゃんなんかヨダレ垂らして寝とる。**さんは大鼾かいとった。
●こんなわけで、わての名前呼んだらさっぱり授業になりまへんでした。
○そら困ったことやなぁ。何とかせな!
●そうでんねん。敵もさるもの。3年生の時、担任がうまいこと考えよった。
○こらこら、先生捕まえて「敵もさるもの」はないやろ。んでどないしたんや?
●例によって先生が名前をよびかけたら、早速***やら、**さんらが寝る用意しかけたんやけど…。
○先生は、どう呼んだンや?

「寿限無(じゅげむ)寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、 <中略> 長久命(ちょうきゅうめい)の長助」と呼ばはった。

<中略>! 名前呼ぶのに<中略>かいな。
●誰も寝る間ありまへんでしたなぁ。
あれ以来、わてはみんなに<中略>と呼ばれるようになりましてん。
○まぁ、無理もない話かもねぇ。

●それでも何とか無事6年間を過ごしまして、卒業式がやってきました。あの頃、字があんまり上手でない校長先生は達筆やった役所の**さんに頼んでました。ほんまに上手な人で、市の表彰状なんかは一手に引き受けたはりました。そうです。あの**さんのお父さんです。
☆あのなぁ、今年も卒業証書の名前書いて欲しいんやけど。頼まれてくれるか?
★毎度のことですな。よろしおまっせ。
☆ただなぁ、ひとりだけ手こずりそうなんが居るねん。長〜い名前なんやけどええか?
★ふ〜ん、そんな長いんでっか。わかりました。ちょっと工夫してみまひょ。
☆卒業式に<中略>というわけにもいかんので、宜しゅうたのむわ。
●てなわけで、**さん工夫をしてくれました。さぁ卒業式!わての番!
●校長先生、うやうやしく卒業証書を手に名前を読み始めはった。

「寿限無(じゅげむ)寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食う寝るところに住むところ、やぶらこ うじのぶらこうじ、<裏に続く>パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命(ちょうきゅうめい)の長助」くん!

<裏に続くう?!!?> ワシはそんな名前つけてへんでぇ!

●わての名前にまつわる泣き笑いの話は仰山おますけど、極めつけは去年のオヤジの臨終のときでしたなぁ。
●お袋がわてに早よ帰ってこい。お父さんがお前に遺言があると言うたはる、てケータイが入りましてん。
●慌てて帰りましたがな。オヤジの枕元にたったら、「もうちょっとこっち寄れ」ハイハイというわけで口元に耳を寄せたら、オヤジがね

「寿限無(じゅげむ)寿限無、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食う寝るところに住むところ、やぶらこ うじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命(ちょうきゅうめい)の長助よ」って言うたなり、後が聞こえへん。

●名前が長すぎて、名前呼んでる間に息が上がってしもたんや。
●肝腎の遺言言わんまに息をひきとってしまいました。
●ホンに罪深い名前ですわ!

○まぁ、泣きないな。分かった分かった。
○ほんなら、あんたにありがた〜い、新しい、名前をつけてあげまひょ。今日を機会に、あんたは「寿限無の長助」と名乗りなはれ、短うても立派にありがた〜い名前や。

☆てなわけで、今日は「寿限無の長助」はんが、その辺に来てはるはずです。
 皆さんのお側に座ってまへんか?
 まだ食べてへん筈のおかず減ってまへんか?
 「寿限無の長助」はんは大食いですよってになぁ。
 よう、お膳の上を見張っておくれやす。

☆減ってても宜しおまんがな。
 消費税大増税でちょろまかされるより、タチよろし!

 お粗末でございました。
by itya-tyan | 2013-11-04 14:07 | 喜怒哀楽をともに… | Trackback | Comments(0)
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