戦後70年 〜 安倍談話・天皇談話をめぐって 〜

 ボクは象徴制といえども天皇制には疑問・批判を持っています。ただ、現行憲法のもとで象徴天皇制を全面否定する立場ではありません。長い目でことを見つめ、あるべき姿を国民的な目線と論議で再検討する時代の到来を期待し、予測するのみです。
 また、満州事変いらいの戦争の時代を指揮した昭和天皇の戦争責任追及と、平成という時代を過ごしている明仁天皇とを同列において論じることにはムリがあるなぁという「実感」をもっていました。
 ですから、折々に報道される天皇・明仁氏の言動には注目してきました。近年は、特に安倍晋三首相の暴走とは「いささか趣が違うなぁ…」との思いを強くしています。
 そんな時に紹介されたのがこの本です。感想はともかく、ボクのような立場の者は目を通しておくべき本なのだろうと一読しました。
 明仁氏の言動をひとまとまりの流れにおいた記述として参考になりました。
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 あえて感想は述べません。著者の矢部宏治氏とはホンの少し視点の異なるところがあるようにも思いますが、「私たち日本人が誇りにし、何より守りたいと思っている『戦争をしない国』(=平和国家)という基本的な国のかたち。それがなぜいま、安倍政権というたったひとつの政権によって破壊されようとしているのか」、「その大きな疑問を解くために、これまで『平和国家・日本』に関してもっとも深い思索をめぐらしてこられた明仁天皇の言葉を、一度くわしくたどってみたいと思ったのです」という著作の動機にはうなずけるものがあります。

戦後70年 〜 安倍談話・天皇談話をめぐって 〜_b0142158_23263625.jpgひるがえって、安倍首相はこの8月に出すはずの「首相談話」をめぐって迷走しています。
 キーワードは「侵略」と「植民地支配」という言葉です。村山談話、小泉談話は、かつての戦争を「植民地支配と侵略」と定義し、アジア諸国への「心からのお詫び」という言葉が盛り込まれていました。
 安倍首相はこれを省きたいのですが、首相談話(閣議決定)とすれば国際社会からの孤立は必至です。そこで閣議決定しないで「首相の談話」とする妙案を考えたものの、自民党内の保守系議員の間から、「過去の談話を塗り替えるためには、閣議決定すべきだ」とする声が上がりはじめたというのです。文字通りの迷走です。

 くわえて、安倍首相が歴史認識の転換を行なう内容の70年談話を出した場合、全国戦没者追悼式とは別に、天皇の特別な「戦後70年のお言葉」が発表されるという情報が流れています。
 天皇の学友である橋本氏が終戦記念日の「お言葉」は安倍首相にとって厳しいものになる可能性を指摘したというのです。
 憲法とともに生きてきた陛下ほど、戦争がいかに悲惨で悲劇的かを理解されている方はいない。軍備に頼らず、平和主義で文化国家をつくるというのが昭和天皇から引き継いだ精神であり、試行錯誤しながら象徴天皇として国民とともにある平成の皇室を築いてきた。
 しかし、安倍首相は国際情勢の変化を理由に憲法解釈を変え、米国議会演説で公約した安保法制を無理に成立させようとしている。陛下は口に出せずに苦しんでおられると思います。終戦記念日のお言葉では、現在の日本の繁栄は300万人にのぼる戦争犠牲者の上に築かれているという追悼の思いを前面に出されるのではないでしょうか。


 この“天皇談話”が出された場合、国際社会では安倍談話は格下げ必至です。安倍首相も、まさかこんなところで立ち往生するとは思っても見なかったのではないでしょうか。

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