各月の異称を温ねる!

 温ねる(たずねる)とは難しい使い方もあるものだ。どうやら<表外音訓>というもので、普通は「尋ねる」と書くべきもののようだ。
 意味は「おさらいする。ならう」ということのようで、「温故知新」つまり「故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねてあたらしきをしる)」という用例に通じているらしい。
 ボクはこの一年、ある機関紙の巻頭言を担当することになって、文章の冒頭に各月の異称のうちもっともポピュラーな異称を紹介してきた。長期にわたる連載を覚悟したので、何年かは数多くある異称を紹介し続けることは可能だろうという確信があったからだ。
 幸いにもこの連載は一年で終え、今後は交代で書くという見通しになったので、異称の紹介は中断することになるだろう。
 で、この一年の巻頭言の冒頭に書いたポピュラーな異称の部分だけをまとめることにした。

 正月は年の一番目の月。異称は睦月(むつき)。「互いに往来して睦まじくする月」と言われます。心のこもる互いの交流が始まり、深まる年初めの月としたいものです。

 二月。寒い日々が続きます。冬は「冷ゆ」に、異称如月(きさらぎ)は「衣更着」つまり「着物をさらに重ね着する」に由来するとも言われます。
 その寒さに耐えて頑張る私たちを励ます言葉に「冬来たりなば、春遠からじ」というシェリーの詩の訳と伝えられる言葉があります。

 三月の異称は弥生(やよい)。「弥」にはいよいよ、ますますの意味があるそうです。「草木がいよいよ生い茂る月」とのことですが、十日になっても雪が降りました。でも、庭のツツジやバラには花芽がしっかりついています。雪解けの春です。

 四月の異称は卯月(うづき)。「卯木(うつぎ)の花が咲く月」とされますが、逆に「卯の月」に咲く花だから『卯の花』という説もあります。月々の異称は旧暦のためやや違和感を伴います。まして、八日には六甲山や金剛山で雪と桜のコラボが見られたとあってはなおさらです。

五月の異称は皐月(さつき)。「早苗月(さなえつき)」の略で、早苗を植える月のこと。が、田植えの最盛期は北が早く、南は遅い。沖縄県の三月五日に始まり、遅い所は六月中旬と長期間です。

 六月の異称は水無月(みなづき)でした。梅雨の月、田植えの月です。上代に「な」という言葉は「の」という意味がありました。「水の月」というわけです。この用語法は「水な門(港)」、「水な本(源)」、「目な子(眼)」、「手な心(掌)」などに僅かに残っています。
 さて、もう七月中旬です。異称は文月(ふみづき)。「含(ふふ)み月」の意で稲の穂がふくらんでまだ開かない月とも、七夕に詩歌を供える月とも言われます。

 麦酒や冷酒はともかく、甘酒や焼酎、泡盛まで夏の季語と知って驚いたことがあります。いずれも暑気払いの妙薬というわけなのでしょう。
 八月の異称は葉月(はづき)。一般には「穂発(ほはり)月」のことで、稲の穂を張る月ですが、「葉落(はおち)月」の駱で葉が落ちる月とも言われます。猛暑のさなかですが、季語では秋とされます。

 九月の異称は長月(ながつき)。夜長月の略です。陽暦では10月上旬から11月上旬にあたり、季節感をこめて「菊月」とも称されます。

 十月の異称は神無月(かみなづき・音便かんなづき)。この「無」は水無月の「無」と同じで「の」という意味。「神の月」です。出雲の国に八百万(やおよろず)の神々が集う月です。よく「無」との対称で「神有月」とされますが、「神在月」、つまり神の在す(おわす)月とするのが本来のようです。

陰暦十一月の異称は霜月(しもつき)。「霜降り月」の略です。本来「陽暦では12月頃のこと」でしたが、今は陽暦でも11月の異称とされています。十月に出雲に集まった神々が、それぞれの国に帰るので「神帰月(かみかえりづき)」とも言われます。大阪の初霜は12月5日頃。最も早い記録は36年の10月24日(大阪管区気象台)でした。月も半ばを過ぎると、年末に向かって慌ただしい日々が始まります。

 十二月師走。発音通り「しわす」と書きますが、古語では「しはす」です。由来については「師馳せ」が最有力ですが、他に年が果てる「年果つ(としはつ)」、四季が果てる「四極(しはつ)」、一年の最後に為し終える「為果つ(しはつ)」など諸説があります。広辞苑を見ると、師走坊主、師走比丘尼、師走浪人などはいずれも「落ちぶれてみすぼらしい」僧や尼、浪人のこととあります。安倍政治や維新政治のもとで師走国民、師走府民、師走市民にはなりたくないものですね。
by itya-tyan | 2015-12-11 15:57 | 喜怒哀楽をともに… | Trackback | Comments(0)
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