指定都市、中核市、特例市の規定と権限

 都道府県は、各種の法律や政令にもとづいて事務を処理する権限を持っています。その広範な事務の内の幾つかを「大都市」に委譲することができます。一般的には、指定都市は都道府県の8割、中核市は指定都市の7割、特例市は中核市の3割に相当する権限移譲を受けているとみられます。
 「大都市」とは広い意味では、指定都市、中核市、特例市も入りますが、狭い意味では人口50万以上の政令で指定する市、つまり「指定都市」を指します。「指定都市」は一般に「政令指定都市」、「政令市」などとも呼ばれます。
 大阪府内では大阪市に続いて、堺市が加わり、全国では17市が「指定都市」になっています。ここには条例で「区」を設け、区の事務所(必要と認める時は出張所)を置くこと、区にも選挙管理委員会を置くことが義務づけられています。「指定都市」には、都道府県が扱う事務のうち、児童福祉、民生委員、身体障害者の福祉、生活保護、行旅病人及び行旅死亡人の取り扱い、社会福祉事業、知的障害者の福祉、母子家庭及び寡婦の福祉、老人福祉、母子保健、障害者の自立支援、食品衛生、墓地・埋葬等の規制、興業場・旅館及び公衆浴場の営業の規制、精神保健及び精神障害者の福祉、結核の予防、都市計画、土地区画整理事業、屋外広告物の規制などに関する事務など、15事務が委譲されます。
 「中核市」は政令で指定する人口30万以上、面積100平方キロ以上の市で関係市からの申し出にもとづいて指定されますが、市議会・都道府県議会の議決が必要です。府内では高槻、東大阪の両市、全国39市です。取り扱う事務は原則として指定都市に委譲される事務と同じですが、都道府県が処理する方が効率的な事務(道路管理、県費負担教員の任免など)、独自に扱うことが非効率な事務(児童相談所の設置など)が除かれます。
  「特例市」は人口20万以上、手続きは中核市と同じです。府内では茨木、吹田、豊中、寝屋川、枚方、八尾、岸和田の7市、全国43市です。取り扱う事務は中核市に準ずるのですが、除外規定も多く、政令に明記されているのは都市計画、土地区画整理事業だけです。
 大都市、中都市、小都市、町村という区分

 「都市」という言葉は日頃何気なく使っていますが、「逆引き広辞苑」でひいてみると、衛星都市、観光都市、近代都市、国際都市、指定都市、姉妹都市、自由都市、城郭都市、消費都市、新産業都市、生産都市、政令指定都市、大都市、筑波研究学園都市、田園都市、都市、無防守都市、六大都市など、沢山の言葉が出てきました。では「地方自治法」は都市や町村をそれぞれをどう位置づけているのか、考えてみましょう。
 市町村や都道府県の取り扱う事務についての記述は次のような順になっています。「普通地方公共団体は、都道府県及び市町村」とされ、「市町村は、基礎的な地方公共団体として、都道府県が処理するものとされるものを除き、一般的に、事務を処理する」、次に「都道府県は市町村を包括する広域の団体として、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整、及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理する」とあります。憲法で「国の責務」が明示されたうえで、地方自治法では、まず「都道府県の処理する事務」に言及し、市町村はそれ以外の「一般的な事務」を処理するというのが基本的な流れなのです。「市町村でできることは市町村で」という「広域連合・道州制」論者の論立ては法の流れとは合致しません。
 同法第8条で「市」は「人口5万以上」など幾つかの要件が定められ、さらに都道府県条例で「都市的施設その他の都市としての要件」を定めること、「町の要件」については人口も含めて定めることになっています。なお、府条例は「町は人口概ね8千以上」としています。したがって、都道府県、市・町以外が「村」ということになります。
 なお、「都市」については、同法第12章「大都市に関する特例」の項で人口50万以上を「指定都市」、人口30万以上・面積100平方キロ以上を「中核市」、人口20万以上を「特例市」とする場合の手順や処理事務の内容をさだめており、これらがいわゆる「大都市」というわけです。なお、「地方財政白書」では人口10万以上の市を「中都市」、10万以下の市を「小都市」と区分しています。
 ねらいは広範な事務と強力な権限

 橋下知事は「関西広域連合の実現を急ぎ、将来の関西州へのステップとしたい」と強調、何がなんでも「道州制への移行一番乗り」を果たしたいようです。この「広域連合」は地方自治法では、従来からあった「一部事務組合」とともに「地方公共団体の組合」とされています。どう違うのでしょうか。
 一部事務組合は文字通り地方自治体の「事務の一部を共同処理する」ものであり、各構成団体にその主体性があります。構成団体間で利用料金や減免規定などがばらつくことがあるのはそのためです。ただし、組合の構成員は各自治体そのものであり、住民の関与は「間接的」です。また、組合議会の議員は各議会からの「派遣」が通例です。府内の一部事務組合には水防、消防、下水、火葬場、清掃、その他(競艇・養護老人ホーム・学校給食・リサイクル施設)など、32組合があります。
 分権一括法や地方自治法改正(95年)にともない制度化された「広域連合」は「一部事務組合」とは全く異なる様相を持っています。例えば「一部事務組合」は同一の事務を持ち寄り共同処理するものですが、「広域連合」は複数の異なる事務をも共同処理できます。そのためには「広域計画」が必要になりますが、この「計画」には「広域連合」の扱う事務でない事柄も盛り込むことができ、「計画」に基づいて国や都道府県の権限に属する事務の移譲を求めることができるうえ、構成団体に「規約」の変更を求めることも、「勧告」することもできるのです。つまり「広域連合」は極めて広範な事務を扱い、強力な権限を持つことができます。その「強権」への危惧を避けるためか、構成員に住民をふくめ、「広域連合」への直接請求権の行使を認めています。また、議会の議員及び連合長は「選挙」で選出することとされ、住民による直接投票か、構成団体の議会議員による選挙(議員の場合)、構成団体の首長による選挙(連合長の場合)かを選択できることになっていますが、直接投票制度は事実上、有名無実です。
  改善・充実が求められる意見公募手続

 橋下知事が提示した「大阪維新プログラム案」へのパブリックコメントでは批判的な意見が多数寄せられ(詳細は8月10・17日付け本紙参照)、話題になっています。府は提出された意見・提言に対する「考え方などについては、今後の府議会の議論を踏まえた上で整理し、あらためて公表」するとしています。「府議会の議論を踏まえる」というところがミソですが、府民の真摯な意見表明に対してどんな「整理」がされるのか興味深いところです。
 ところで、このパブリックコメントとはそもそもどんな制度なのか、確認しておきましょう。
パブリックコメントとは一言でいえばパブリック(公)に、コメント(意見・情報・改善案など)を求めるという制度です。行政手続法では「意見公募手続」と言われます。この法律は「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資すること」を「目的」としています。意見公募手続きの具体的な内容としては「(行政機関が)命令等を定めようとする場合には、命令等の案、関連資料、意見の提出先、提出期間(公示の日から30日以上)を定めて広く一般の意見を求めなければならない」というものです。当初は「規制の制定又は改廃に係る意見提出手続」に限られていましたが、法改正により「命令等を定めようとする場合の一般原則」となりました。この「命令等」には、「法律に基づく命令」、認可等の「審査基準」、不利益処分の「処分基準」、「行政指導指針」などが含まれます。また、提出された意見(コメント)については「考慮した結果及びその理由」を公示しなければならず、意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合は「実施しなかった旨及びその理由」を公示しなければなりません。一見立派な内容なのですが、内閣府の調査によればこの制度の認知度は低く、「知らない」が87.8%とほとんど実態がありません。しかも、この法律は地方公共団体の機関への適用を除外し、努力規定にしているため、府内の市町村でおこなわれているパブリックコメントのほとんどは条例や規則ではなく「要綱」に基づくか、行政機関の任意に任されており、きわめて恣意的なものといわざるを得ません。
  浮かび上がる府顧問団の影

 橋下知事は「過去のしがらみや経緯にとらわれない」と言いますが、「大阪維新プログラム案」をよく読むと特別顧問や特別参与の影がに次々と浮かびあがります。
 たとえば、見直しの対象となった博物館等5施設のうち、PT試案の段階から存続の方向が確定していたのは「近つ飛鳥博物館・風土記の丘」、「狭山池博物館」だけでしたが、これは特別顧問・安藤忠雄氏の設計によるものでした。
 また、橋下知事は力をこめて「大阪ミュージアム構想」を提唱していますが、その源流は01年に発足した「大阪ミュージアム文化都市研究会(事務局・大阪ガス)」にあり、その「研究会」の「主査・リーダー役」を勤めてきたのは特別顧問・橋爪紳也氏です。
 さらに、「維新プログラム案」は「海外事務所」4カ所のうち3カ所を廃止。「市場としての有望性に鑑み」上海だけを残すとしています。ここには上海で法律事務所や「キャストコンサルティング(上海)有限公司」を開設してきた特別顧問(中国ビジネス担当)・村尾龍雄氏の影がちらつきます。「維新プログラム案・重点政策」では「2010年上海万博」に「大阪市と共同で『ベストシティ実践ゾーン』に日本の都市で唯一出展」を誇らしげに掲げ、8月6日には「上海万博大阪出店実行委員会(会長橋下知事・副会長平松市長)」を立ち上げましたが、ここでも先述の橋爪紳也氏が「プロデューサー」に起用されています。しかも、上海万博には当初「出馬は2万%ない」と言っていた橋下氏を自民党の古賀誠選対委員長に引き合わせ、出馬を促したとされる堺屋太一氏も深く関わっています。堺屋氏は目下「上海万国博日本産業館出展合同会社」なるものの代表を勤めているのです。
 「人事制度担当・特別参与」の山中俊之氏はテレビで「皆が、予算や定員を要求すると、要求の歌合戦になる」と発言したことを「比喩」の例にあげ、自慢しますが、府民の目線からはタチの悪い「揶揄(やゆ)」としか思えません。