無言館「傷ついた画布のドーム」前庭の「絵筆の碑」のこと
「何だかよく分からないが、曰くありげなモニュメントだなぁ」と思いながら撮った写真です。
右の上の方に、赤い汚れがあります。決して美的とは言えません。
裏に回って埋め込まれた一文を読んで、憤りをおさえかねました。
絵筆の椅子(ベンチ)と題された文面です。
椅子の背を飾る90本の絵筆は、現在画壇で活躍中の画家、美術学校で勉強している画学生さんの絵筆です。壁面を汚している赤いペンキは、2005年6月18日、実際に「無言館」の慰霊碑にペンキがかけられた事件を「復元」しました。「無言館」が多様な意見、見方のなかにある美術館であることを忘れないためです。
当時のことは次のように報道されていました。
戦没画学生慰霊碑にペンキ 長野・上田の「無言館」
同館などによると、慰霊碑は縦約3メートル、横約4メートルの黒御影石製。ペンキは慰霊碑の中央を上から下に、約1・5メートルの幅でかけられていた。17日夕までは異常なかったという。前庭は夜間の出入りが自由だった。
慰霊碑には、第2次世界大戦で亡くなった画学生403人の名前と、戦時中の東京美術学校の授業風景が刻まれている。全国の遺族や関係者の寄付などで建てられ、昨年6月に除幕した。
2005/06/18 09:16 【共同通信】
他の報道には、館主の窪島誠一郎氏が「無言館について様々な考え方やとらえ方があるのは当然だが、それをこうした手段でしか表現できないとしたら、あまりに悲しいことです」と語ったとあります。
「絵筆の碑」、正式には「絵筆の椅子(ベンチ)」と名づけられたこのモニュメントは「多様な意見や見方のなかにある」こと、「様々な考え方やとらえ方がある」ことを率直に受けとめつつも、冷静で抑制的に、しかし毅然とした抗議の意志を表明するモニュメントだったのです。
碑の裏にはこんな言葉が彫り込んでありました。