32 選挙運動

 主権者の自由侵す日本の制度

 公選法の「戸別訪問禁止」の規定に違憲判決を下した広島高裁松江支部の判決(80年4月)は「選挙は、国民が国政に参加し、主権者として自らこれを決定する、最高にして最重要の権利行使」と位置づけ、「選挙運動は、候補者や選挙運動者だけが行うものではなくて、主権者としての誰もが行い、また行いうるものである」との認識に立っていました。その意味で「選挙運動は本来、自由に行われるのが理想(府選管HP)」です。
 しかし、現実の公職選挙法はとても煩雑で制約が多く、国民の参政権を大きく妨げています。吉井英勝議員の選挙運動規制についての質問(06年4月)に対し、総務省は「アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスとも戸別訪問は自由、文書配布とインターネットはフランスで一定の規制があるが他の3国は自由」と答え、日本の制度の不合理性を認めざるを得ませんでした。「戸別訪問禁止」については「憲法上許される合理的でかつやむを得ない限度の規制であると考えることはできない」と、地裁や高裁が6件の違憲判決を下しましたが、最高裁判所がこれをことごとく覆しました。
 国民・有権者が各候補者の政見や政党の政策を比較、検討する上でもっとも充実した期間となるはずの選挙運動期間は何度も短縮され、当初(50年)の衆参国会議員・知事・都道府県議会議員30日、市町村長・議員20日から、衆議院議員12日、参議院議員・知事17日、都道府県・指定都市の議員9日、指定都市の長14日、一般市の長・議員7日、町村長・議員5日となってしまい、立会演説会は制度そのものが無くされました。
 巨額の金を使ったCMや新聞広告が天下御免の一方で、草の根の運動が厳しく規制される日本の選挙制度は「世界でも異常、不公正・反民主的」と言われるほどひどいもので、4割台の得票だった自民党が7割以上の議席を占めている小選挙区制、年間320億円も山分けする政党助成金、選挙区300万円、比例代表600万円にのぼる高額な供託金などがその典型です。